NEWS(研究活動)教育実習から教員研修まで支える「教育実践力向上CBT」
2025年8月7日
現場を想定した1,000問超の問題で“実践力”をトレーニング 本学では、将来教師を目指す学生が安心して教育実習にのぞめるよう、「教育実践力向上CBT(Computer Based Training)」という学習システムを開発し、活用しています。このCBTは、教育実習前に必要な知識や考え方、そして現場で求められる対応力を身につけることを目的としており、実際の学校現場で起こりうるさまざまな場面を想定した1,000問以上の問題に取り組むことができます。問題の内容は「学級経営」「学習指導」「生徒指導」「特別支援教育」「危機管理」「法令」など、教師に必要な幅広い分野をカバーしており、すべての問題は元校長先生など実践経験が豊富な教員が協議して作成しているため、より現実的で実践的な力を育むことができます。選択肢は、実際の教育現場でよくある対応方法を基にして作られており、単に正解を選ぶのではなく、「自分ならどうするか?」を考えながら、さまざまな対応方法を学ぶイメージトレーニングとしての役割を持っています。 いつでもどこでも学べるクラウド型、実習前の検定もサポート このCBTは、スマートフォンやパソコンを使って、空いた時間に好きな場所で学習できるクラウド型で、3年生になると50問の検定を受けて35問以上正解すると教育実習に進むことができます。検定の結果はグラフで可視化され、自分の得意分野や苦手な分野を把握できるため、実習前の「学び直し」にも活用されています。また、このCBTは教育実習前の準備だけにとどまらず、日頃の授業や実習後のふり返り、少人数での対話、授業映像の視聴などにも活用され、「深く考える学び」の機会としても大切にされています。実際にCBTを体験した学生のアンケートでは、90%以上が「実習の準備に役立った」と回答し、「子どもとの関わり方が具体的にイメージできた」「実習中にCBTの内容を思い出して行動できた」など、実践的な効果を実感する声も多く寄せられています。教員になってからも学び続ける──「現職教員用CBT」へ発展 さらに、このCBTは大学生向けだけでなく、新任の先生や若手教員の研修にも活用されています。教員になってからも、現場で求められる力を継続的に身につけられるように、大学生用CBTをもとにした「現職教員用CBT(約900問)」が新たに開発されました。教師になったばかりの新任教員は、十分な実践的な学びを受けないまま現場に立つことも多いため、このCBTを活用して基本的な教育実践方法を再確認し、自分の強みや課題を明確にすることが求められています。実際に北海道や札幌市の教育委員会では、このCBTを新任教員研修に導入しており、例えば札幌市では令和6年度に約350名、北海道教育委員会では令和7年度に約800名が受講しました。研修の流れは、CBTの使い方や省察方法の講義、実際の問題演習、ふり返りや今後の研修計画の検討という3段階で進められ、指導教員や管理職による個別面談も、CBTを活用した演習シートを使ってオンラインなどで実施され、指導に対する気づきを深める機会となっています。 こうした取組を通じて、新任教員は普遍的な実践方法を身につけながら、自らの課題解決力を高めていきます。実際に、研修を受けた先生たちからは高い評価が寄せられており、例えば札幌市教育委員会のアンケートでは、「課題解決力が高まった」「実践に生かせた」といった項目で90%以上が肯定的な回答をしています。このように、「教育実践力向上CBT」は、教育実習前の学生だけでなく、新任教員や若手教員の学びを支えるツールとして、実践的で効果的な学びを提供しています。
全国の大学にも広がる取組、本学の役割とこれから 現在では、全国約80の大学にもこのCBTがモニター提供されており、教員養成や現職教員の研修の場でもその活用が広がっています。 本学ではこれからも、学校現場のニーズに応え、実践力ある教師を育てるために、CBTを活用した学びを一層深め、教員養成から採用、そして現場での研修までを一体的に支える取組を進めていきます。